前回のエントリー「荷崩れを防ぐには」でお話しした通り、走行中に荷崩れを起こす原因として、走行中の路面の凹凸からくる振動や衝撃、急制動や急発進などの急激な運転操作からくる衝撃、そしてカーブや曲がり角における急旋回時の遠心加速度が挙げられます。このような振動や衝撃を受けて生じる荷崩れの発生状況を分類すると「横滑りによる荷崩れ」「積み付けの形が崩れることによる荷崩れ」「転倒による荷崩れ」の3種類に大別することができます。
数物のカートン貨物では、積載率を上げるために積み重ね段数を増やす必要があります。中身の重量がある程度重たい場合は、カートンの縦横の配列を各段ごとに変えることによって、上下のカートンがわずかに食い込んで横滑りに対する抵抗力が増し、滑りにくくなります。しかし、軽いカートン同士や正方形のカートンの場合は、摩擦係数が低いため、側面あおりやロープ掛けなどによって横滑りを防ぐ対策を施す必要があります。特に、長いS字カーブや曲がり角での旋回時に、遠心力によって横滑りして荷崩れを発生しやすいので注意が必要です。
また、コイルなどの鋼製品、鉄板類、工作機械などの裸貨物の場合も、十分な強度を持った固縛をほどこしていないと、急制動時の衝撃やカーブ走行時の遠心力により横滑りを発生し、運転席を押し潰したり、車体外へ積荷が落下して交通渋滞のみならず、通行人や他の車両を巻き込んだ大きな事故に結びつくことになります。特に、カーブ走行中や曲がり角で不意に人、自転車、車などが飛び出してきて、旋回しながら急ブレーキをかけたりした時に固縛強度が不足していると、ワイヤロープが切れて積荷が路上に落下してしまう事故が多く報告されています。
これは、生野菜や果物などを、カートンではなく合成樹脂や竹製のカゴに入れて積み付けた場合や、稀に生野菜を裸のまま積み重ねて積み付ける場合などに起こりやすい荷崩れです。このように積荷そのものが積み付け(積み重ね)に対する外装強度を持っていない場合は、積荷の荷崩れを積み付けの仕方とロープ掛けで防ぐことは不可能に近しいのです。すなわち、積載場所全体を外装容器とすることが必要です。つまり深あおり車や密閉バン車を使用するか、ボックスパレットなどを利用せざるを得ません。
また、カートンや木箱などは中身の貨物の破損を含めて下段の貨物が重圧により変形し、荷崩れを生じることが稀にあります。積み付け時にカートンの変形や木箱の損傷状況に注意する必要があります。別の例としては、木材やコンクリートパイルや円筒などで怪の大きい貨物の場合は、ロープなどによる固縛強度(固縛箇所数×ロープの強度)が不足していると、カーブ走行や曲がり角での旋回時などに遠心力がかかりロープの緩みが大きくなり、積み付けが崩れることでロープが切断されることがあります。このような貨物については、三角形の歯止めとワイヤロープによる固縛、あるいは荷台の両側面でのスタンションを使用することが有効です。
背の高い積荷の場合は重心の位置が高いので、急ブレーキをしたりカーブ走行や曲がり角での急旋回時において、積荷が転倒する恐れがあります。転倒を防止する方法としては、ロープ掛けの強度(固縛箇所数×ロープの太さ)を一般的な貨物の場合より大きくする方法と、転倒しにくいように転倒するときの回転の支点を台木やスタンションなどを用いて上方にずらす方法があります。