トレーラー走行時の安全運転のポイント
- 茂木 敦史
- 2017年5月30日
- 読了時間: 9分
高度な安全技術が求められるトレーラーのドライバー
安全なトレーラー走行には、高い運転技術はもちろん、柔軟な思考による事故の未然予防対策や十分な事前のチェックと、様々な状況に対してスピーディで慎重な判断力が求められます。今回は安全なトレーラー走行におけるポイントを見ていきましょう。
正しい運転姿勢
まずは運転姿勢です。一口に運転姿勢といっても様々なチェックポイントがあります。正しい運転姿勢を取ることで、視界が広くなり、運転による疲労も大幅に軽減されます。それでは、一緒に正しい運転姿勢とはどういったものか、一緒に見ていきましょう。
ハンドルは肘がわき腹から大きく離れない位置、おおむね9時15分の位置で持ちます。
ヘッドレストの中心が耳の高さになるように調整します。
背もたれは105度前後にします。
シートとお尻・背中の間にすき間がないように、深く座ります。
シートの高さは、ももの下に軽く平手が入るくらいとします。シートが高すぎるとペダルを床まで踏み込めなくなります。
シートに深く座った状態で、左足の土踏まずでクラッチペダルを床まで完全に踏み込める位置にシートを調整します。シートが後ろ過ぎると、ペダルを床まで完全に踏み込もうとすると、お尻の位置が前にずれてしまいます。
ハンドル位置は、両肩がシートから離れない状態で、まっすぐ 手を伸ばして、ハンドル上部に中指の第一関節がかかる程度に調整します。
大きなトレーラには、非常に多くの死角が存在します。その死角を補うには、正しい運転姿勢とミラーの活用が欠かせません。また、右左折時や後退時等の車両が折れ曲がる際には、ハンドルを切る前に死角になる部分の安全を確認しておくことが大切です。
正しい運転姿勢でも死角は多い、不安があれば止まって再確認
積荷と運転感覚
積載時と空車時の運転感覚の違い
トレーラーは荷物を積載している「積載時」と、何も積載していない「空車時」や「単体時」の、大きく2種類の車両の状態が存在します。その違いをしっかりと認識して、走行時にはそれらの特性にあった運転をする必要があります。
トレーラは、積載時と空車時では重量差が非常に大きく、速度のコントロールやギア・チェンジ等の操作に大きな違いが生じます。
同時に、軸重配分の変化から、車両のバランスが大きく変わるので、空車時にハンドル操作やブレーキ操作の加減を間違えると、滑ったり、横転したりする危険性があります。
トラクタのみで走行する場合は、さらに車両のバランスが異なるため運転操作には注意が必要です。
空車時やトラクタ単体時の急ブレーキは危険
積載時と空車時では重量差が大きいことから、動力性能に大きな差を生ずる
速度コントロール、ギア・チェンジなどの操作が相当異なることを覚えておかなければならない
その他の注意点
トレーラは2つの車両を連結しているため、運転席に荷台の挙動が伝わりにくく、荷台に傾き等の異常が発生してもドライバーの感知が遅れる場合があります。
国際海上コンテナでは、内容物の重心位置や移動状況がわからないため、横転事故になるケースが多発しています。とくに慎重な運転を心がけてください。
タンクトレーラ等、液体や粉末等を輸送するトレーラでは、急なハンドル操作による内容物の揺れ動きにより車両バランスが失われ、横転する危険性があります。山道やカーブでの運転はとくに注意が必要です。
あおりの無いトレーラで鉄板等の重量物を運ぶ場合、急ブレーキにより積載物が前方に移動し、運転席を直撃するおそれがあります。
積載時と空車時の運転感覚の違いに注意
ドライバーの目の高さ
トラクタなど大型車の運転席から見た視界と乗用車の視界には大きな違いがあります。トラクタは、乗用車の約2倍の地上2.5メートルほどで、下を見下ろすようになり実際の距離より長いと錯覚します。そのため、トラクタのドライバーは前車との距離空間が広く見えて実際よりも余裕があると感じ、車間距離を詰めすぎる傾向があります。
トラクタの運転視界
前車との距離空間が広く見えるため、実際より余裕があると感じ、車間距離を詰めすぎる傾向がある。
乗用車の運転視界
視点が低い分近く感じる。
夜 間
●大型車の夜間運転視界●
前述でもお伝えした通り、トラクタの運転席から見た視界と乗用車の視界には大きな違いがあります。このためトラクタなどの大型車は、いつの間にかうつむき加減の楽な運転姿勢をとってしまうので、無意識のうちに視線は下向きになり、足元(直近の路面)を覗き込むように走行します。とくに、高速道路での夜間走行ではヘッドライトの照射範囲に限られ、ますます下向きのまま視線が固定されがちになってしまいます。しかし、常時下向きでいるわけにもいきませんから、視線を上げて前方を見なければなりません。そのため、トラクタのドライバーは
無意識に視線の上下運動を繰り返し、単調な眼球動作になります。この動作はドライバーが眠くなる危険性
をはらんでいますから注意が必要です。
ドライバーの目とライト(前照灯)の位置が離れているため、 目に返ってくる反射光が少なく、歩行者などの発見遅れを招き やすい。とくに、右方からの横断歩行者は発見しにくい。
乗用車と比べて、前照灯から照射された光を上から見下ろすため、足元だけが明るく、前方が暗闇になることが多い。
トラクタ
視界が分断され、灯りが路面上のものかどうか判断しにくい。
トラクターはドライバーの視線が下向きになりやすい
乗用車
路面上の灯りが連続した視界のなかで認知できる。
乗用車は水平方向の視線が無理なく保てる
交差点
●内輪差・側方の死角に注意●
狭めの道路を左折する場合など、トラクタ・トレーラは内輪差が大きいため、一旦右に振ってから曲がることがあります。また、左側のミラーに映る範囲も狭く、左後方の死角が大きくなり、
二輪車などを見落とし、巻き込む
ことがあります。 右折時は、右折する側の道路に
停止している車にトレーラ部分が接触する
ことがありますから、右左折時には、側方や後方など周囲によく目を配るようにします。
目視、ミラーでも見えない死角はいったん停止で確認を
カーブ
きついカーブでの対向車線のはみ出しに注意してください。
右カーブではトレーラの後部
右カーブの場合は、トレーラの内輪差により
後輪が道路内側に寄る
。
左カーブではトレーラの前部
左カーブの場合は、トレーラの前部はトラクタより
外側に張り出した状態
になる。
カーブは対向車の動きにも十分注意
車線変更
連結車両は全長が長いので、
追い越しや車線(進路)変更はできるだけ避ける
ようにします。追い越しを行う場合は、非常に長い距離が必要になるので、前後に十分余裕があるときに行うようにします。 後続車両に追い越されるときは、
追い越されるのが終わるまで自車の速度を上げない
ようにします。追い越し車両が直前に割り込んでくることもあるので注意してください。
車線(進路)変更を行う場合は、目視をはじめ、バック・ミラーなどで安全を確認し、ウインカーで早めに合図をして、後続車などが気がついたと思われるのを待ってから進路変更するようにします。
追い越し
前後に十分 げない 余裕があるときに行う
追い越され
追い越しされるのが終わるまで速度を上 前後に十分 げない
車線(進路)変更
早めの合図
トレーラ走行時の挙動は速度、ハンドル操作に大きく依存します。
進路変更等の際、トラクタの運転席ではトレーラの挙動が伝わりにくいため、トレーラのタイヤが浮いている状態でも、運転席では認識できません。また、3軸車に比べて2軸車トレーラの方がロール角度が大きい傾向にあります。2軸車トレーラはより注意が必要です。
実際には、気象条件、道路コンディション、積荷の積載状況、運転方法等により、条件が異なるため、これまで安全だった速度以下でも、横転する可能性は十分にあります。
急なハンドル操作はトレーラの横転原因
急勾配路
●下り坂ではエンジンブレーキや排気ブレーキの活用を●
長い下り坂を走行する時は、トレーラブレーキを使用しますが、
単独使用を避け
、排気ブレーキ、リターダブレーキ等の
補助ブレーキを併用
して、速度を落とします。
トレーラブレーキの使用は必要最小限に
急な上り坂ではトラクタとトレーラが接触したり路面にシャーシが衝突することもあります。
ゆるやかな下りカーブはとくに注意
踏 切
●踏切の安全な通過方法●
①低床トレーラはとくに「ハラツキ」に注意 低床式トレーラなどは、
盛り上がっている踏切路面で「ハラツキ」
になり、立ち往生するケースも見られます。
下車してよく確認しましょう
※橋梁の継目や舗装の段差があるとハンドルをとられたり、トレーラにおされたりして車両が不安定になることがあります。 ②踏み切りを渡った先の状況もよく注意 渋滞等による踏み切りでの立ち往生や車体の後部が
踏み切りに残るおそれがある場合は進入しない
ようにしましょう。
車体の長さを考えて
③道幅の狭い踏切では落輪しないよう十分注意 対向車があってすれ違うのが
ギリギリの場合は、対向車を先に
通しましょう。
車両の長さ、高さを意識すること
ガード下の高さ制限
積載物の高さをよく確認し、
車高制限のある場所では衝突しない
ように注意しましょう。
ガード等への衝突事故は、鉄道・道路をストップ
円滑な交通に多大な影響を与えます
トンネル
●トンネルの入口では前車の減速に注意!●
トンネル内を走行する場合には、高さ制限標識、対向車、トンネル内の照明など設置物への接触等に注意のうえ、
十分に速度を落として走行
しましょう。
トンネルに接近したら、前車の減速に注意!
車間距離も十分に!
運行前の経路確認をしっかりと
雨天時
・視界が悪くなる
・路面が滑りやすい
・雨が降り始めたら、スピードを落とす
・進路変更はしない
◆◆トレーラのおもな特性◆◆
大型貨物車に比べて内輪差が大きいため、右左折時や大きなカーブの通行時はとくに注意を要します。
2つの車両を連結しているため、トラクタ側にトレーラ側の挙動が伝わりにくく、トレーラ側に傾き等の異常が発生してもドライバーの感知が遅れる場合があります。
セミトレーラでは、後退時のハンドル操作が大型トラック等のほかの車両と違います。
空車時と積載時の重量の差が大きく、積載状態により車体の重量バランスが異なり、運転感覚に大きな違いが生じます。
あわせて、トラクタのみで走行する場合は、さらに車体の重量バランスに違いが生じるため慎重な運転が必要です。
ゆるやかな下りカーブでは、スピードの出し過ぎやハンドル操作に注意しましょう。
スピードダウンで、視界確保とスリップ予防
物流が支える安全な車社会のために
いかがでしたでしょうか。トレーラーの安全走行には様々な注意ポイントがあり、ドライバーの皆さんは常日頃からそれらをこなして、日々の業務を安全に遂行されているんですね。ドライバー当事者の方だけでなく、周りのドライバーも安全を心がけていきましょう。



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